【コラム】不動産投資の「売却」で失敗しない6つのポイント

不動産投資は賃貸経営で安定した収入を得ることももちろん大切だが、「いつ売却するか」という点も重要になる。十分な売却益が得られれば次の投資資金に充てることも可能になるが、売却するタイミングを間違えると、その投資自体が失敗になってしまうこともある。

今回は主に初心者向けに、購入時から実際に売却を決断するタイミングまで、出口戦略を考えるうえで最低限知っておくべき7つのポイントを紹介していく。


【1】購入時に「安く買って高く売る」を意識する

収益物件を売却するときは、当然ながら買ったときよりもできるだけ高く売りたいところだが、建物は築年数が古くなると不動産としての価値がどんどん下がっていってしまう。しかし、土地の場合はどうだろうか。経済情勢の変化によって多少は土地価格に変化はあるが、建物ほど価値が下がっていくことはない。そこで、まず収益物件を探すときに、土地と建物の価値のバランスに注意してみよう。

例えば5000万円の投資用マンション一棟が売却に出ていたとする。内訳は以下の通り。

「建物価格4000万円・土地価格1000万円」

少し極端な例にしてみたが、このような割合だったら10年後・20年後の価値はどうなっているだろう? もし10年後に建物価格が50%(2000万円)程度値下がりしていたら、3000万円でしか売却できないことになってしまう。

では、以下のような場合はどうだろうか。

「建物価格1500万円・土地価格3500万円」

こちらも極端ではあるが、10年後に売却するときに建物価格が50%(750万円)程度下がっていたとしても、4250万円での売却が可能になる。もし購入したときに実際の不動産相場よりも安く買えていたら、買ったときよりも高値で売れる可能性が期待できる。つまり、建物価格よりも土地価格の割合が大きい物件であれば、「安く買って高く売る」が現実味を帯びてくることになる。

【2】不動産の売却相場をチェックしておく
土地と建物の価格相場は自分で調べることができる。収益物件を探している段階で気になる物件が見つかったら、まずは売却価格の内訳をチェックしておこう。

■土地の売却相場
分かりやすい土地の計算方法は、路線価から実勢価格(実際に取引される不動産価格)を算出するやり方だ。路線価とは、市街地などの道路に面した宅地1平米あたりの評価額のこと。国土交通省が発表している公示地価の80%程度となっている。公示地価は代表的な地点(標準地)にしか価格がつけられていないため、路線価を用いることになる。

実勢価格は公示地価の110%相当とすると、土地の実勢価格を算出する計算式は以下の通り。

実勢価格=路線価÷80%×110%

例えば1平米あたりの路線価が10万円で、土地の面積が200平米の場合は下のような計算になる。

1平米単価10万円×土地面積200平米=路線価2000万円

路線価2000万円÷80%×110%=2750万円

この場合の土地の実勢価格は2750万円だ。

路線価は路線価図から簡単に確認することができる。

(参考サイト:国税庁 路線価図)

■建物の売却相場
建物もざっくりではあるが建物価格を自分で割り出すことが可能だ。

まず、建物の再調達価格を割り出してみよう。再調達価格とは、実際に同じ建物を建てたときにかかる費用のことを言う。再調達価格は国土交通省が発表している「建築着工統計」を基に計算する。

(参考サイト:国土交通省 建築着工統計) 

例えば築20年の建物の場合で計算してみよう。木造で延床面積は150平米とする。建築着工統計によると、平成11年であれば、木造の1平米あたりの再調達価格は約16万円だ。

16万円×延床面積150平米=2400万円

建物の再調達価格は2400万円。この価格に築年数や建物の耐用年数を考慮して計算してみよう。

木造住宅の耐用年数は22年なので、計算式は以下のようになる。

建物価格=再調達価格×[(耐用年数-経過年数)÷耐用年数]

2400万円×[(22年-20年)÷22年]=218万1818円

築20年が経過した場合の建物価格は、約218万円ということが分かる。

あくまでも参考程度としてのものだが、自宅で簡単に計算できるし、マンションなどの鉄骨鉄筋コンクリート造の場合でも対応可能だ。

【3】賃貸し続けるメリット・デメリットを再検討する
投資用物件を長く賃貸経営していると、建物の修繕費用や税金の負担が増えてくる。このままずっと賃貸し続けるべきか、売却するべきか、それぞれのメリット・デメリットを考え直してみよう。

■長く賃貸経営することでのメリット
・家賃収入が得られる

・家賃収入を自由に使える

・他の所得と損益通算することで節税できる

■賃貸し続けるデメリット
・建物の修繕費や維持費の負担増加

・建物が古くなることでの家賃収入の低下

・所得税や住民税などの負担

・不動産としての資産価値の低下

賃貸経営の現状を見直してみて、メリットとデメリットを箇条書きにしてみると、築年数が古くなってきた収益物件を「所有し続けるか」「売却するか」という判断がつきやすくなる。

【4】売却するタイミングの判断基準を持つ
物件は年数が経てば徐々に傷みが生じ、設定家賃を下げざるを得なくなり、修繕費用も掛かってくる。完全に不動産としての価値がなくなる前に売却して現金化したいところだが、タイミングの判断基準はいくつか存在する。

■デットクロスを見る
デットクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費の額を上回った状態のことを言う。減価償却費とは、不動産の購入代金を分割して経費に計上する費用のこと。例えば投資用マンションを購入した代金を一括で経費に計上するのではなく、建物の耐用年数などに減価償却できる期間に振り分けて経費計上するものだ。

例:4000万円で中古マンション一棟を購入した場合

4000万円を20年に分けて経費計上すると……年間200万円ずつ減価償却費として経費にできる

減価償却費は、毎年実際に200万円のお金が出ていっているわけではないが、帳簿上は経費として年間200万円を計上できる。そのため、所得税などの税金対策にもなるというメリットがある。

これに対し、不動産ローンの元金返済額は経費にすることができない。経費として入れられるのはローンの利息分のみとなっている。

ローン契約を元利均等方式にしている場合、ローン返済額はずっと一定だが、最初のうちは返済額に含まれる利息分の割合が大きい。そのため、年数が経つにつれて利息の割合が減っていき、返済額の中の元金の割合が増えてくる。

元利均等方式(返済額はずっと一定)

最初の数年間の返済額の中の割合……利息>元金

年数が経つと……利息<元金の割合になってくる

ローン返済額の元金分は経費として計上できないため、元金の割合が大きくなってくると、いつかは「減価償却費<元金返済」のデットクロスとなる。

減価償却費として毎年200万円もの額を経費にできるのは、所得税などの税金負担を減らすことができるという意味で大きなメリットといえる。もし売却するのであれば、この減価償却費の期間が終了するタイミングも良いのではないだろうか。減価償却が終わるとその分の所得税が増えてしまうため、賃貸経営の収支にも影響してくるからだ。

■キャピタルゲインを見る
キャピタルゲインとは、売却益のこと。収益物件を買ったときよりも高く売ることができれば、大きなキャピタルゲインを得られるだろう。

いま賃貸経営している物件が「いくらで売却できるのか」ということも把握しておきたいところ。すぐに売るわけではなくても、所有している不動産の売却相場は知っておいたほうが良い。不動産一括査定サイトなどを利用して売却に関する相談だけでもしておこう。

■大規模修繕の時期をチェック
一棟アパートや一棟マンションを賃貸経営している場合は、建物の長期修繕計画が必要になってくる。とくに10年や15年ごとの大規模修繕は多額の支出が考えられるため、その前に売却するのもタイミングの一つとして考えておきたい。

【5】物件売却の流れを掴む
売却を決めたら、実際に収益物件を売却するまでのおおまかな流れを掴んでおこう。

①不動産ローンの残債を確認する
②売買契約やローンを完済するための必要書類を確認する
③投資用物件を査定してもらい売却相場を知る
④不動産会社と媒介契約を結ぶ
⑤売り出し価格を決める
⑥購入希望者が内見をする
⑦購入希望者から買付(不動産購入申込書)を受け取る
⑧不動産会社や買主と相談して売買契約日や決済日を決める
⑨買主と売買契約を締結する
⑩売買代金の決済と物件の引き渡しを行う
⑪不動産ローンの全額繰り上げ返済(ローン完済)を行う

一般的な流れは以上の通りだ。不動産は売却することが決まっても、相手方となる買主のローン審査待ちなどがあるため、決済までには1ヵ月以上かかることがほとんど。早めに売却したい場合は、決済日から逆算して売買計画を立てるようにしておこう。

【6】物件の所有期間を意識する
投資用マンションなどを売却するときに気を付けておきたいのが、物件の所有期間。物件を売却して利益を得た場合は、譲渡所得税という税金が課税される。

この譲渡所得税は「物件をいつまで所有していたか」という期間によって課税される税率が変わってくるため、売却する前に確認しておこう。

譲渡所得税は2つに区分されている。

■長期譲渡所得
土地・建物の所有期間が5年を超える場合

■短期譲渡所得
土地・建物の所有期間が5年以下の場合

譲渡所得税の税率は以下の通り。



所得税

住民税

長期譲渡所得

15%

5%

短期譲渡所得

30%

9%

上の表にある所得税と住民税を足した税率が譲渡所得税として課税される。

例えば投資用物件を購入してから5年以内に売却した場合は、39%もの譲渡所得税が課税されることになるのだ。

所有期間が5年を超えるかどうかによって税率に19%もの差があるため、売却のタイミングはしっかりと確認しておく必要がある。



【まとめ】投資用物件を買うときは出口を考えておく
不動産投資で賃貸経営を行っている場合は、「建物がいつまでもつのか」ということも考えておきたい。建物は劣化していくし、周辺に新しいアパートやマンションが建てば競合して、古い物件は家賃の相場が下がってしまうだろう。

減価償却の期間が終わると経費として計上できるものが減ってしまい、税金負担が大きくなるリスクもある。そうなる前に物件を売却して現金化することで、次の収益物件の頭金にすることができる。売却と再投資を行い、新たな収益を生み出したほうが生産性は高いという考え方もできる。

不動産投資に売却=出口は欠かせない。初めから出口戦略を検討しておけば、投資を拡大するための計画も立てやすくなり、「どんな物件を買えば良いか」を明確にすることにもつながっていく。



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